糖尿病関連情報

糖尿病と運動療法

( 医師 杉廣貴史 ) 

2型糖尿病において運動療法は、血糖コントロールの改善だけではなく、肥満や内臓脂肪の改善、インスリン抵抗性の改善をもたらします。
その結果、脂質異常症や高血圧症の改善、心血管疾患のリスク低下が得られます。

また運動によりQOL(生活の質)やうつ状態の改善、認知機能障害の改善も報告されています。
1型糖尿病においての運動療法は、血糖コントロールの点では長所と短所がありますが、その他の改善効果は2型糖尿病と同様です。インスリンの調整や補食を実施しながら運動することが推奨されています。

運動には、有酸素運動とレジスタンス運動があります。
有酸素運動は、筋肉への負担が比較的軽く、長時間継続して行える運動です。
心肺機能を強化し、全身持久力を高める効果が期待できます。

ウォーキングがその代表でしょう。
運動習慣がない方は、まずは楽に感じられる速度でウォーキングを開始します。
運動の効果は約2日間持続するので、休みが2日間連続しないようにします。
週に150分以上が推奨されているので、30分程度のウォーキングを週に4〜5日間実施するのが良いでしょう。
体が慣れてきたら、ややきつく感じる程度にウォーキングの速度を高めていきましょう。
3分間毎に、「ゆっくり歩き」と「きつく感じる早歩き」を繰り返すインターバル速歩もおすすめです。
レジスタンス運動は、いわゆる筋力トレーニングです。
骨格筋の筋量増加、筋力増強が期待できます。
年齢とともに衰えていく骨格筋を維持していくために、高齢者においては特に重要な運動となります。

週に2〜3日、連続しない日程で行います。
筋肉痛がある時は休みましょう。
全身の様々な筋肉を対象とした運動をバランス良く組み合わせるのが理想的ですが、余裕がない場合は大きい筋肉(体幹や臀部、大腿の筋肉)をトレーニングするスクワットなどが効果的です。
また下肢など特定の部位に筋力低下がある場合は、その部位の運動を中心に行いましょう。
有酸素運動とレジスタンス運動はそれぞれ単独でも血糖コントロールが改善しますが、双方を行うことで持久力の向上と筋力の強化が得られ、相乗効果でより効果が高まります。

運動に取り組む時間がなかなか割けない場合は、日常生活内において生活活動を増加させることが有効です。
日常生活でのエネルギー消費量が少ないことは肥満につながり、座位の時間が長いほど心血管疾患が増加することが報告されています。
通勤の際に歩いたり、建物内の移動では階段を利用したり、工夫をしてみましょう。
座位時間が連続して30分を超えないことが理想的ですので、TVを観ている際など、CMの時には立ち上がって動きましょう。
有酸素運動で推奨されている週150分以上の運動を歩数に換算すると約15000歩になります。歩数計を使って、1日当たり2000歩+αの歩数アップを目標にすれば取り組みやすいと思います。
自分自身、総合病院で勤務していた時は、広い病院内を歩き回っていましたが(糖尿病の方はすべての病棟におられるので、全科医師の中でたぶん糖尿病内科医の歩数が一番多いでしょう。)、今では診療中に座りっぱなしとなってしまいましたので、通勤を徒歩にして朝晩20分ずつ歩くようにしています。

当院では、運動療法の個別指導にも取り組んでいます。運動療法のアドバイスを希望される方は医師にご相談ください。

ページトップへ