糖尿病関連情報

「ウォーキングの秋」がやってきた

( 院長 片岡 伸久朗 )

秋になりましたね。
芸術の秋、読書の秋、食欲の秋、そしてスポーツの秋、といったりします。
糖尿病患者さんにとって、「スポーツの秋」っていうのは少し違和感があるかもしれません。それは、スポーツというとテニスとかバドミントンなどの比較的激しく体を動かす運動を想像させるからです。
スポーツを運動、と言い換えてもやはり違和感があります。
糖尿病患者さんの治療の三本柱は食事・運動・薬物ですが、最近は運動療法といわずに、歩行療法、という風にいったりもします。
糖尿病患者さんに推奨されるのは比較的緩やかなもの、いわゆる有酸素運動であり、それは散歩の延長のようなものだからです。
今回は糖尿病の方になぜ歩くことが推奨されるのかを考えてみましょう。

どんな運動がよいかということで、まずは糖尿病の方に適した運動は「いつでも」「どこでも」「ひとりでも」できるもの。
それから、「運動強度を調節できるもの」さらには「安全」で「あまりお金のかからないもの」といったポイントが挙げられます。
これらの条件に見事合致するのが歩くこと、ウォーキング、というわけです。
歩くことはいつだって、どこだって、ひとりでも多人数でもできます。
歩くスピードを調整することで運動強度を自分でコントロールできます。
コロナ禍ですから、より安全な運動が求められますが、人があまり通らない川土手などを選んで歩けば、換気は抜群ですからマスクもあまりいらないかもしれません。
今日すぐに始められますし、歩くのにお金はかかりません。
しいて言えば、シューズはきちんとしたものを履いて行っていただきたいくらいです。

次にウォーキングを続けるためのポイントですが、 初めは時間や歩数を気にせずゆっくり歩き始め、徐々にスピードアップをしていく。
そして歩幅を少しずつ広げていければいいですね。
姿勢よく歩くことで足腰に負担がかかりにくくなります。
頭を重心の上に位置するように、空から頭をひもで引っ張られているイメージでよいでしょう。
そして、 気分が乗らない日、調子の悪い日は無理せずに休む。これも大事です。

では、ウォーキングの効能を列挙してみましょう。

まずは、血糖値が低下する
筋肉を動かすことでインスリンの効きがよくなるのはご存じでしょう。
インスリンの分泌が少ない方でも血糖が下がってくる。
血圧も下がりやすくなる
一日の歩数と血圧との関連を調べた研究で、歩数が多ければ多いほど血圧は下がることが示されています。
脂質異常が改善する。
歩くことでエネルギーを燃焼させますから、 内臓脂肪を燃やします。
それで体重も減りやすくなりますし、脂肪肝の改善にもつながります。
血糖や血圧、脂質が改善する、ということは動脈硬化を予防する働きがあるということです。
歩くことでしっかり呼吸しますから、心肺機能を強化できる。
歩いて脳が活性化すれば、認知症予防にもつながります。
インスリンを節約することがアルツハイマー病で脳に沈着するアミロイド蛋白を減少させるといわれます。
また、よく体を使えば、 よく眠れる
不眠の9割は歩くだけで治る ともいわれています。
さらには歩くと腸もよく動くようになり、便秘が改善する
足は第二の心臓と言われ、足を動かすことで全身の血行が良くなり、肩こりや腰痛なども改善しやすい。
ウォーキングの効能はこうした身体的な面だけではありません。精神的にもいい影響がある。
まず、ストレスの改善になる。
歩いていると気持ちがいいですね。秋の風を受けて歩くと爽快です。
体を動かしている、ということで自信もついてくる
さらには時間を決めて歩くと、規則的な生活の橋渡し的な効果があります。
総じてアンチエイジングの効果が期待できて健康寿命の延伸に繋がる、というわけです。

まずは歩くことを意識するために、スマホの歩数計を使うことから始めてみませんか。
ただし、ご高齢の方は歩行時の転倒に注意。
足が思ったほど挙がっていなかったりするかもしれません。
サルコペニア(筋肉量が少ない)傾向がおありの方は、家でのスクワットや踏み台昇降などの筋トレと組み合わせて行って頂くのがよいでしょう。

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