糖尿病関連情報

蛋白尿の出ない腎臓病が増えている

糖尿病三大合併症というと、神経障害・網膜症・腎症ですね。
それらの覚え方をご存知ですか。
しんけい・め・じんぞう それぞれの頭文字をとって、「しめじ」と覚えましょう。
足のジンジン・ビリビリから壊疽を発症してきたり、網膜症で失明に至ったり、腎症が進行して透析が必要となったり。
そしてこれら三大合併症の主因は高血糖であるといわれます。
ですから、血糖値を管理していればまず、どんどん進んだりしません。
HbA1cを低く保たれれば、三大合併症は出現しにくくなる、という学術的な証拠はいくつもあります。
今回は三大合併症の一つである「糖尿病腎症」にスポットを当ててみましょう。

 腎症といえば、従来から5段階で進むとされてきました。
第1期;腎症前期―蛋白尿を認めない正常腎機能の時期です。
第2期;早期腎症期―微量アルブミン尿(30〜299)の時期です。
―通常の検尿のみでは蛋白尿は出ていませんが、尿中の微量アルブミンという細かい蛋白の有無をチェックすることで診断できます。
第3期;顕性腎症期―持続性蛋白尿の時期です。
一般検尿で、毎回蛋白尿が出ている、といった方がこの時期に該当します。
第4期;腎不全期―すでに腎臓の働きである、血液をろ過する能力が半減した時期です。
第5期;透析療法期―腎機能が低下したために血液を十分にろ過することができず、血液透析や腹膜透析といった代替手段を用いて老廃物を外に出さなくてはいけない時期です。
これらのうち、第4期を判定するのは血液検査になります。
「血清クレアチニン」という腎機能の項目があるのをご存知でしょう。
これは「筋肉から出てくる老廃物」です。
クレアチニンは腎臓以外では排出されません。
これを測定することで腎臓の機能を推し量ることができ、この血清クレアチニン値を利用して、eGFRという値を計算します。(具体的には男性; 194×Cr-1.094×年齢-0.287、女性; 194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739、という計算式で算出)
eGFRは「腎臓が1分間にどのくらいの血液をろ過できるかを推定した数値」ということができます。
皆さんの血液検査の項目にありますね。
通常は一分間に60 mL以上の血液をろ過するのが正常で、若い人では100mL以上です。
この数値が30 mLを割り込んでくると第4期、ということになります。
以前は、腎症として第1期から順に2期、3期、4期と進んでいって透析に至るケースが糖尿病腎症が進行するパターンの大半を占めていました。
しかし、最近問題となってきたのが、この順番でなく、いきなりeGFRが低下してくるケースです。
微量アルブミン尿もしくは蛋白尿が出ていないのに腎臓のろ過能力が低下してくる。
そういった病態では血糖以外の血圧や脂質異常・肥満・喫煙といったものが合わさって動脈硬化をきたし、腎臓のろ過力をそいでいくと考えられています。
(動脈硬化で腎臓に十分な血液が回りにくくなり、ろ過量が減ってしまいます。) こうした腎疾患を全部ひっくるめて、「糖尿病性腎臓病」(DKD)と呼ぶようになりました。
それは「糖尿病腎症」も含んだ概念です。
ではDKDに対してどう対処していくか、というと今までと何ら変わることはありません。
減量や運動・禁煙といった生活習慣の是正、それで不十分なら降圧薬や糖尿病薬、高脂血症の薬ということになります。
DKD予防で最近注目を浴びているのが糖尿病薬の「SGLT2阻害剤」という薬です。
この薬剤は尿に糖を出して血糖・体重を下げます。
この薬を内服し始めていったんeGFRが少し低下したとしても長期的にはeGFRは保たれる方向に向かうといわれています。
ただ、SGLT2阻害剤は余分に出ていく尿糖が水を連れて出るため尿量を増やします。
そのため水分を十分補給することが必要です。
まあこの季節、脱水状態で腎機能を悪化させないためにも、SGLT2阻害剤内服の有無に関わらず、水分をこまめに摂っておくことはどなたにとっても重要なことではありますが。

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