糖尿病関連情報

 シュガー(糖質)を減らし、繊維を増やせ    (15.12.15)

 まだ僕が安佐市民病院に勤務している頃のこと、「ひろしま」の頭文字をとって、糖尿病予防のキャッチフレーズを作成したことがあります。

 ;肥満一つが万病の元
 ;老化予防は歩行から
 ;脂肪を減らし、線維を増やせ
 ;まあるい心でストレス知らず

 これらのうち、どうも「し」の「脂肪を減らし」という食事に関する常識が、少し揺らいでいるようです。
 日本人の食生活が欧米化するに従い、脂肪摂取割合が増加しました。それに並行して、日本人の肥満・糖尿病の方が増えてきた、とされていました。しかし、最近では脂肪摂取割合に関してはもう増加していないのに、肥満・糖尿病の方はまだ増え続けている。そういえば、米国ではフラミンガムというボストン郊外の住民健康調査で、「コレステロールが高いと心筋梗塞が増える」という結果が出たため、なんとか血中コレステロールを低下させようとして、高脂肪食を減らすためのキャンペーンが繰り広げられました。その結果、確かに米国民の血中コレステロールは日本人と同じくらいまで低下したのですが、ご存じのように肥満・糖尿病は爆発的に増加してしまいました。ということは、必ずしも脂肪を減らすのが肥満・糖尿病の方の食事として正しい、というわけではないかもしれない。というわけで、いま糖尿病学会でも、少しずつ従来の食事療法に対する見直しが始まっています。糖質配分は結構多めの50〜60%程度、脂肪は25%以下で、総カロリーを制限する、というのが従来の学会の食事療法です。しかし、体重コントロールが可能なら、もう少し柔軟に対応してもよいのでは?例えば今はやりの「糖質制限食」も選択肢のひとつとしてもよいのでは?という動きが出てきているようなのです。
 この10月に米子の糖尿病学会地方会で画期的な教育講演が行われました。教育講演というのは、糖尿病専門医の資格を継続するために受講が課された特別な講演です。その講演が、「糖質制限食に対する今日的理解と(糖尿病)食事療法学の課題」(北里大学・糖尿病センターの山田悟先生)というものでした。特筆すべきなのが、講演の座長を務められた方がその年の総会の学会長だった山口大学・谷澤教授という点でした。講演内容を聞いて、確かに今までの食事療法のみでは継続が困難な場合があり、患者さんの選択肢を増やす、という意味でこういった方法を許容するのはありだろう、と思いました。
 では、その時に提唱されたダイエット法はどんなものか、というと「緩やかな」糖質制限食です。決して厳しいものではない。継続できなくては意味がないので、一日140gの糖質すなわち一食あたりの糖質量を20-40gの範囲にする、という方法です。これだったらわりに続けやすく、しかも食事に対するインスリンの必要量をぐっと抑えることができ、血糖値の上昇を防ぎやすいし、減量効果も期待できそうです。具体的にはご飯だと茶碗に半分より少し軽め、トーストだと半切れ、もちろん、おかずに、イモやカボチャなどの糖質を多く含むものは控える必要があります。菓子や果物など、甘い味のするものは大体糖質ですし、ソースやケチャップなどの調味料にも気を付ける。その代り肉や魚、大豆製品などの蛋白質主体の食品はある程度摂取してオッケー。もちろん野菜類もふんだんに摂ってください。一方で、必ず体重計に朝晩、一日二回乗って、そのダイエットがうまくいっているかどうかを確認しておいてください。
  というわけで、糖尿病予防のキャッチフレーズを少し変えなくてはなりません。「脂肪を減らし、繊維を増やせ」⇒「シュガー(糖質)を減らし、繊維を増やせ」ということにしましょう。

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