糖尿病関連情報

「尿中微量アルブミン」について

先週の木曜日(6月7日)に、臨床検査技師さんを対象として1時間の講演を行わせていただきました。タイトルは『イベント抑制のための糖尿病臨床検査』としました。
ここでいう『イベント』とは、糖尿病関連の有害事象、たとえば透析や脳梗塞、心筋梗塞などのことです。糖尿病患者さんに多いといわれるこうした事故を可能な限り防ぐには、どのような検査をしたらよいか?という講演内容でした。
糖尿用関連の臨床検査には、インスリン分泌能を知るための検査や、血糖コントロール状態を知るためのもの、合併症をチェックするもの、などあまたありますが、合併症が次第に出現しつつあることを知るための検査として、最も重要なものの一つが「尿中微量アルブミン」です。

  糖尿病患者さんで尿中微量アルブミンを測定する意義とは、以下の2つです。
    1. 糖尿病腎症の最も早期に現れる所見であり、診断・治療の目安となる。
    2. 将来的に心血管系疾患を発症しやすい方を教えてくれる。
(尿中微量アルブミンは糖尿病腎症の方のみで出現するわけでなく、メタボの方でも出現しやすく、1999年のWHOのメタボリックシンドローム診断基準には尿中微量アルブミンの項目がありました。)
 
 アルブミンというのは、細かい蛋白です。腎臓という血液のろ過装置が障害されるとアルブミンが尿中に出現してくる。また、腎臓は血管の集合体のような装置ですから、このアルブミンの出現が血管の早期の障害を教えてくれる、というわけです。ただ、 尿中アルブミンは運動や尿量、採取時間等によっても異なるため、的確に診断するためには、随時尿を用いてアルブミンとクレアチニンを同時に測定し、その比をとります(アルブミン・クレアチニン比)。この比が29までなら尿中に微量アルブミンは陰性。30〜299は陽性。300以上はアルブミン尿というより、既に「蛋白尿」ということになります。

  DEMANDスタディーという研究で、2型糖尿病患者さんではアルブミン尿の有病率が非常に高いというデータが示されました。世界全体のデータ(1)、その中のアジア人のものが(2)であり、(3)が当院の過去1ヵ月間の2型糖尿病患者さんのデータです。DEMANDスタディーでは、2型糖尿病患者のほぼ半数で微量アルブミン尿陽性でした。
総計148例のみのデータではありますが、当院のアルブミン尿陰性率は67%と非常に高率で、これは誇っていいデータだと思いました。おそらく、血圧や脂質の厳格なコントロールが寄与しているものと考えられます。
ただ、アルブミンあるいは蛋白尿が既に陽性の方でも悲観なきよう。
強力に動脈硬化の危険因子(肥満・過食・運動不足・糖尿病・高血圧・脂質異常・喫煙)を管理するとアルブミンが尿中に漏れなくなることはよく経験されることですから。

        
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