糖尿病関連情報

「AGE」ってなに?

糖尿病関連用語の中で「AGE」というものがあります。年令(エイジ)のことではなくて、Advanced Glycation End-product―終末糖化産物―の頭文字をとったものです。終末糖化産物って、日本語で言うと余計わかりにくい感じですね。でも、この「AGE」が糖尿病合併症の大きな原因となっていると言われており、頭の隅に置いておいて頂きたい用語です。
  生体内の蛋白質は糖と長い時間接触していると、糖がくっついて「糖化」蛋白となります。血糖が高ければ高いほど、そして高血糖の時間が長くなればなるほどこの「糖化」は進むわけで、この現象を利用したのが皆さんご存知の「HbA1c」です。(HbA1cはHb−ヘモグロビン−という赤血球蛋白のうちで「糖化」したもののパーセンテージを測定しています。)「糖化」が起こると蛋白質は劣化した状態になり、固有の機能が損なわれます。蛋白質がザボン漬け状態になって元に戻らなくなってしまう、そういった現象のなれのはてを想像していただければ、「AGE」について理解しやすいかもしれません。例として、コラーゲンという蛋白のAGEによる劣化、これが皮膚のしわやしみだったり、水晶体蛋白に対するAGEによる影響が白内障だったりする、こういったものが挙げられます。人間は次第に中古になるのは避けられませんが、まさに「AGE」により、年を重ねる以上に部品の劣化を起こしてしまう。加齢を加速する変化と考えると、なるほどAGEという命名はよくできていると思います。

 AGEは食品にも含まれており、食品中のAGEを食べることによっても体内に蓄積する可能性がある。ですから、AGEがどんなものに多く含まれるかを知って、その摂取を少なくすれば、AGEの蓄積が少なくてすむ、ということになります。AGEは「茶色い」という特性があり、大雑把にいうと、茶色く着色した食品に多く含まれます。具体的にはコーラや醤油、焼き魚や焼肉の「こげ」、これらが代表選手です。こうした茶色いものは少な目に摂った方がよさそうです。コーヒーや紅茶の含有するAGEはそれほど多くないようですが、それでも過剰な摂取は控えたい。加えて、砂糖が一緒だとAGEは余計に産生されますから、特に白糖はあまり摂らないほうがよい。しかし、こうした「茶色い」食品を全く摂らない、っていう生活は現実には困難ですから、まずはAGEの過剰な摂取を控え、その蓄積を防ぐ働きのあるカテキンやビタミン類を一緒にしっかり摂る、また喫煙者は禁煙してAGEの発生を抑制する、というのが落としどころでしょうか。

 高血糖の是正が困難でも薬でAGE産生を抑えることができれば、ある程度慢性合併症を防げることが期待されます。そのため、AGEの産生を阻害するような物質は昔から創薬のターゲットとなってきました。現在まで副作用のためにこのような薬は実用化していませんが、こうした薬が使えるようになれば、血糖コントロールの困難な方にも強い味方となるのでしょう。 (メディカルトリビューンという医学新聞の9月1日号に、僕も出席した座談会の記事が掲載されています。そのときコメンテーターに久留米大学の山岸昌一先生をお迎えしました。山岸先生は本邦のAGE研究の第一人者で、その座談会の際にもAGEについてのお話しがありました。待合室にその新聞を掲示しておりますので診療待ちの時間にでもご覧になってみてください。)

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