糖尿病関連情報

危険な不整脈「心房細動」が増えている (2010.9.15)

今年の9月9日、ANAクラウンプラザ広島で「血液SARASARA研究会」がありました。糖尿病の患者さんにとって「血液サラサラ」は最も重要な課題のひとつです。ですから、循環器内科の先生に混じって、僕は毎年この会に出席させていただいています。
 今回のこの会のテーマは「心房細動」。この不整脈は心臓が停まったりする類いのものではなく、心臓がてんでばらばらに打つものです。しかしたかが不整脈、と侮ることなかれ。心臓の中に血栓を形成し、それを脳に飛ばして脳梗塞を起こす、というとんでもない危険性をはらんだ不整脈なのです。そして本邦では、高齢の方の増加に伴いこの不整脈を持つ人が増えてきています。例えば、小渕元首相はこの不整脈による脳梗塞で亡くなりました。長島巨人軍終身名誉監督やオシム元サッカー日本代表監督もこの不整脈が元で脳梗塞を起こされました。この危険な不整脈が増えている、というのですから穏やかではありません。
 研究会では慈恵医大の山根准教授がまず特別講演で、その心房細動をいかにカテーテルで治療するか、という話しをされました。それは「カテーテル・アブレーション」という治療法で、カテーテルを血管から挿入し心臓に到達させ、肺静脈付近にある異常な電気信号の伝導路を焼いて遮断し電気の流れを正常に戻す、というものです。紙面に書けば簡単なようですが、どの施設でもできるという治療法ではなく、心房細動があれば誰にでもこの治療法の適応がある、というものでもありません。罹病期間が長くて正常調律に戻る見込みが低い場合や、治療による合併症リスクが高い場合、また自覚症状なく何も不自由なく過ごされている人にもあまり用いません。カテーテル・アブレーションが困難な場合には、ワーファリンという薬剤を用いて血液をサラサラにし脳梗塞の予防を行う「抗凝固療法」が検討されます。
 講演会の後半では、安佐市民病院循環器内科の先生による心房細動の治療法、心房細動に起因する脳梗塞の予防法についての講演がありました。安佐市民病院では僕が勤めていた頃から、同科の現主任部長である土手先生を中心にこの心房細動の患者さんの診療を積極的に行っていました。特に経食道心エコーという検査で心臓の中にある危険な血栓を発見し脳梗塞を予防する、ということに力を入れていました。今回は、具体的な心房内血栓の画像をいくつも見せていただき、この不整脈の危険性を再認識させられた次第です。

ページトップへ