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酸化(劣化)コレステロールってなに? (2010.3.20)

先日リーガロイヤルホテルで行われた広島脂質研究会では、僕を含めて10人程度の医師が車座に会して大阪大学森下竜一教授のご講演を伺いました。講演のタイトルは「変わりゆく現代日本人の食生活とコレステロール吸収制御の重要性」。面白かったのは酸化(劣化)コレステロールの話しでした。以前にもお聞きしたことがあり耳新しい話題ではありませんでしたが、森下先生のお話しはいつも流れるようで何度聞いても飽きさせません。今回は、その酸化コレステロールについてご紹介しましょう。
 「酸化」された油というと、皆さんはどういったものを想像されるでしょう。酸化コレステロールの典型的なものはバターやマヨネーズが空気に触れて黄色くなった部分、これらが代表選手です。劣化したコレステロールは、体内に取り込まれると通常のコレステロールより早く酸化LDLというリポ蛋白になります。(ここで「リポ蛋白」という概念を説明しておかなくてはなりませんね。「リポ蛋白」とは脂肪を血液中で運搬するための形態をした粒子です。水と油ですから、コレステロールはそのままの状態では血液中に溶け込めません。中心に脂肪、周囲を蛋白質と脂肪で覆われた、石鹸の粒子のように水にも油にも溶けることのできる粒子が「リポ蛋白」です。LDLはコレステロールを末梢に運搬するリポ蛋白、HDLは末梢から脂肪を引き抜くリポ蛋白であり、一般にLDLというリポ蛋白のコレステロールを悪玉コレステロール、HDLというリポ蛋白のコレステロールを善玉コレステロールといいます。)酸化LDLはその悪玉のLDLがさらに超悪玉になったようなリポ蛋白で、血管の内皮下に容易に進入し、マクロファージによって貪食され、最終的に血管の中にコレステロールたっぷりの軟らかいプラーク(粥腫)を作り上げます。この、プラークが破綻することで一気に血管がつまり、心筋梗塞や脳梗塞になる、という仕組みです。つまり、酸化コレステロールを多く摂取すると、その結果全身の動脈にプラークができやすくなり、結果的に心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなる、そうご理解ください。
 では、具体的にどういった調理品に酸化コレステロールは多く含まれるのでしょう。「酸化」はいわば「さび」ですから、ものが古くなるほど、そして加工されればされるほど起こってくることになります。端的にいえば、肉・バター・油の加熱処理で多く産生されるのがこの酸化コレステロールである、ということです。現代の食生活は昔に比べて格段に便利になっていますが、どうやら、その便利さの中に罠が潜んでいるようです。なんでもかんでも「チン」すれば暖かく食べることができる。でも、この「チン」に頼りすぎると、酸化コレステロールを多く摂取することになる。例えば、買ってきたコンビニのフライ弁当が冷めてしまっていて、それを何回か「チン」してしまって計10分以上の再加熱をすると酸化コレステロールが多量にできてしまう。ファストフードの食品を再加熱するのも危険。そのほかに、するめやビーフジャーキー、便利なレトルト食品、これらも危険となりうる食品群。また、インスタントラーメンの麺や焦げた焼き鳥の皮、さらには、てんぷらを揚げるのに油が新しくなければ沢山できてしまう。こういった具合に酸化コレステロールは身の回りに結構沢山あるようです。
 ではどういう風にこれらの食品群と付きあっていけばよいのか。これについても森下先生から解答がありました。まずは何度も再加熱しなくてすむように食品は小分けにして加熱する。それから、食品と一緒に抗酸化物質をできるだけ多く摂取する。例えば、ビタミンCやβカロチンを含む緑黄色野菜を多く摂る。これらが食材としてしっかり混じることで、加熱を受けた際の酸化コレステロールの発生を抑制できる、いうことになります。肉じゃがにしっかり入っているにんじんやさやえんどうが知らず知らずのうちにコレステロールの酸化を防いでいた、ということですから、やはり先人の知恵は偉大ですね。

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