糖尿病関連情報

医療機器に関するフェイルセーフ (2008.6.15)

この度、「糖尿病診療マスター」という医学雑誌に上記の表題で原稿を載せていただくこととなりました。一足早くその文章のエッセンスを皆様にお届けしようと思います。
  「フェイルセーフ」とは、何らかの間違い、事故、故障が起こることをあらかじめ想定して、被害を最小限度に抑える考え方です。患者さん自身がインスリン注射を行う際のフェイルセーフは十分に担保されているでしょうか。インスリン注入器、注射針、血糖自己測定器についてどういったポイントに注意してこれらを使用すればよいかを概説しました。
  1)インスリン注入器;注入器のトラブルのうち最も重大なものは破損です。外出先のトイレなどでインスリン注射を行う際に適当な場所を見つけられず落下の原因となることがあります。注入器は必ず水平な場所に置く。そしてケースに入れて携帯しましょう。絶対に落とさない、物理的な衝撃を加えない。そうした意識付けが必要です。注入器の保管方法も重要なポイントです。保管場所として極端に高温または低温になるところ(車の中、冷凍庫、飛行機の貨物室など)や直射日光は避けましょう。 インスリン注入器は冷暗所に室温で保管するべきであり、冷凍庫に保存してしまったらインスリンも注射器もだめになってしまいます。注射後には必ず注射針を取りはずしておきます。インスリンを2種類以上使用している場合には、間違ったインスリンを注射してしまう事故を防ぐために注入器の色の異なったものを使用させることが基本です。カートリッジ型の注入器にはそれぞれ耐用年数が設定されています。新しい注入器に添付されている葉書に必要事項を記載しメーカーに郵送すれば耐用年数終了の時期にメーカーから交換時期の知らせを受け取ることができます。
  2)注射針:注射針はインスリン注射時の疼痛を緩和する目的で「より細く、より短く」なっています。細いほど、折れ・曲がり・詰まりが起きやすくなります。必ず空打ちを行って注射針の先端からインスリン液が適正に出るのを確認してください。注入ボタンが完全に押せない場合あるいは押しても薬液が出ない場合、注射針がまっすぐ取り付けられているか確認が必要です。注射液が出ないときには注射針が詰まっている可能性を考え、新しい針に取り替えてみてください。また、インスリンの注射針は一度使用したものは再利用しないでください。
 3)血糖自己測定器:血糖自己測定器に求められるのはまずその精度です。精度の低下する原因として多いものに吸引した血液量が不十分な場合があります。一部の機器では正確に測定するための血液が十分吸引されないと測定が開始されませんが、他のものでは十分の血液量でなくても感知音があり測定がスタートしてしまうものがあります。感知音により十分な血液が吸引されたと誤解してしまうと実際より低値に誤ってしまう場合があります。十分量の血液が出ていることを確認したうえで吸引する、また感知音があっても少し余裕を持って機器を外してください。検体がアルコールなどで希釈された場合にはやはり実際の値より低値となってしまうので注意が必要です。濡れた手でチップに触れることも値が狂う原因となります。もし異常値が得られたときは点検用チップで確認されるとよいでしょう。
 4)微量採血用穿刺器具:今色々物議をかもしているのがこれです。2005年11月、英国において穿刺器具を複数患者で使用したことが原因での交叉感染が報告され、それに伴い厚生労働省から通知が出されました。ランセットを装着するタイプのものは複数患者で使用してはならない、という注意です。もともとこうした穿刺器具は自宅で個人が使用するためのものであり、入院患者等の穿刺採血に用いるべきものではありません。複数で使用するとすれば、絶対に交叉感染のないよう、皮膚に触れる部分の汚染される可能性のないものを使用すべきなのです。
自分の機器をどう扱ったらいいかご不明のときはご遠慮なくスタッフにお尋ねください。

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