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糖尿病と睡眠 (2007.3.15)

春ですね。今年の冬は短く一気に春になるかと思いました。もうそろそろ咲こうかと思っていた桜の蕾も寒の戻りに少し出鼻をくじかれたかもしれません。でも、すっかり春ですね。さて、この季節は「春眠暁を覚えず」というように眠りを連想させます。春にちなんで今回は糖尿病と睡眠の関連について書いてみましょう。
睡眠をしっかりとることは糖尿病のある生活にとってどういう意味があるでしょう。ごろごろ寝てばかりいるところを想像すると何となく肥満につながってしまいそうで血糖コントロールが悪化しそうなイメージがありますが、実はそうではありません。「眠る」と「寝る」は違います。しっかり眠ることは規則的な生活の基本ですから、糖尿病療養にとっても大事なことなのです。
皆さんも覚えがおありでしょう。遅くまで起きていると何かしらつい口にしたくなるものです。でも、その「つい」が翌日必要なはずの貴重なインスリンを浪費してしまうのです。早く床に就くことができたらまず不要なものを食べずにすみます。また、睡眠で適正に分泌されるはずの新陳代謝を活発にするホルモンが、睡眠不足だと分泌されず肥満しやすい体質となります。つまり寝不足を続けると体重が増え、血糖コントロールを悪化させやすいという図式です。そのほか不眠症を治療した群では治療しなかった群に比較してHbA1cが0.5%ほど良かったというデータを示した施設もあります。
もうひとつの糖尿病と睡眠との関連は「睡眠時無呼吸症候群」です。内臓肥満者では糖尿病を発症しやすいことは良くご存知と思いますが、睡眠時無呼吸症候群の方も多いのです。内臓脂肪過剰になると気道周辺の脂肪もつきやすくそれが気道の狭窄を招きます。夜間睡眠時、特にアルコールが入ったりすると筋肉の緊張も緩み、脂肪や筋肉が重力で垂れ下がってきて気道を塞ぐわけです。僕が働いていた安佐市民病院は睡眠時無呼吸症候群の臨床研究で先駆的な病院でした。当時一緒に働いていた呼吸器の徳永豊先生とこの疾患の背景因子を検討しましたが、やはり睡眠時無呼吸症候群の患者さんにはメタボリックシンドロームの方が高頻度におられ、無呼吸が重症のグループほど肥満の程度は強くなっていました。
一方で肥満が無呼吸を連れてくるばかりでなく、無呼吸により酸素と炭酸ガスの交換が障害されることで炭水化物の燃焼が妨げられ太りやすくなってしまうことが考えられます。無呼吸そのものが肥満〜インスリン抵抗性を連れてくることで肥満と睡眠障害の悪循環が形成されます。時間的にはしっかり寝たように思えても眠りの質が低下しそのことで代謝されにくい体となり血糖コントロールが悪化する方に向いてしまうわけです。
これらのことを鑑みて僕は日常生活で早く寝る習慣について「早寝早起きダイエット」と名づけたいと思います。ぜひ皆さん、6時間から8時間の睡眠時間はとってください。それから睡眠時間は十分でも、熟眠感がない、いびきが大きい、夜間に呼吸がよく止まっている、日中つい眠ってしまう、といった方は受診時にご相談下さい。

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